XファイルNo.3 〜 放射線って?
放射線というのは、目には見えないし、においも味もしない。身体にあたってもいたくもないし、とおりぬけても感じない。病院でレントゲン検査けんさをしたことがある人はいますか?その時、いたいとかかゆいとか何か感じましたか?何も感じなかったでしょう?
放射線とはとても大きなエネルギーをもった、ちいさなちいさなつぶの流れで、生き物の身体をかんたんにつきぬけてしまうので、これを感じることができないのです。
◆放射線にはどんな種類しゅるいがあるの?
放射線にはいろいろな種類があります。病院の検査や治療ちりょうでつかわれたり、原子力事故げんしりょくじこがあったりしたときによく名前がでてくる放射線の種類をあげてみましょう。
○エックス線(X線)
○ガンマ線(γ線)
○ベーター線(β線)
○アルファ線(α線)
○中性子線
○重粒子線
■エックス線
ウイルヘルム・コンラート・レントゲン博士はかせは実験じっけんしているときに、自分の手の骨の影ほねのかげが紙の上にうつっていることに気づきました。これがエックス線の発見です。博士は「身体をとおりぬけるふしぎな線」という意味でエックス線と名付けました。1895年のことです。発見した博士の名前をとってレントゲン線といわれることもあります。
この放射線は左図のように筋肉きんにくや皮膚ひふなどをとおりぬけ、身体をすかしてみることができる性質のため、発見されるとすぐに医学の分野でさかんにつかわれるようになりました。技術ぎじゅつが進み身体を輪切りわぎりにして見る「CT検査しーてぃーけんさ」も行われるようになりましたが、これもエックス線です。しかし、生き物には害があることは、あまり知られていませんでした。
日本は世界で一番エックス線検査の回数が多いそうです。このためがんなどがふえるといわれています。
これを医療被ばく いりょうひばく といいます。
*( 写真の説明) これはレントゲン博士がとった写真です。骨や金属は黒い影のように写っています。
■ガンマ線
ガンマ線の性質はエックス線とほとんど同じです。これは光の速さでとぶ光のつぶで、原子核 げんしかく がこわれるときにとびだしてきます。目に見える光とちがうところは、エックス線と同じように身体や木や紙などをとおりぬけることです。身体をとおりぬける性質を利用して医療いりょうの検査に使ったり、細胞さいぼうを殺す性質を利用してがんの治療 ちりょう にも使われます。
ガンマ線はあついコンクリートや鉛なまりなどはとおりぬけることができないので、これらはガンマ線を防ぐふせぐために使われます。
この図は、放射線の透過能力(とうかのうりょく)の模式図(もしきず:わかりやすくあらわしたもの)です。実際の放射線とちがうことは、次の2点です。
❶:実際の放射線は、ものをとおりぬけるたびに、いきおいはおとろえます。
❷:人間の身体はほとんど水分ですから、中性子線が人間の身体に当たると、身体の組織を破壊(はかい)したりして、そこで止まるものが多くなります。
■ベーター線
これはとてもはやい速度そくどでとぶ電子で、やはり原子核がこわれるときに とび出してきます。マイナスの電気をおびていますが、アルファ線よりもずっと小さいのでこれよりは長くとべます。体の中では数ミリメートルから数十ミリメートルとぶだけですが、そのとおり道にある細胞をきずつけるのはエックス線やガンマ線と同じです。
■アルファ線
アルファ線ははだかのヘリウムの原子核そのものです。 これもプルトニウムのように大きな原子核がこわれるときにものすごいいきおいでとび出します。図のように二つの中性子と陽子からできています。つぶが大きく、プラスの電気をおびているため遠くにとぶことができないので、ふだんはあまり心配しんぱいはありません。
でも、プルトニウムのようにアルファ線を出す物質がいちど体の中に入ると近くにある細胞をきずつけます。このように体の中から放射線をあびることを内部被ばくないぶひばくといいます。細胞がきずつくとガンなどの原因げんいんになります。
アルファ線が細胞をきずつける力は、同じ量のエックス線やガンマ線の20倍くらいあります。
■中性子線
中性子のつぶがはやいスピードでとぶ線です。原子力発電所の原子炉や原爆のような核兵器に使われる原子の原子核がこわれるときにとび出してきます。
1999年9月30日、原子力発電に使う核燃料を作っていた会社で起きたJCO事故のとき、工場ではたらいていた二人はこの中性子線をたくさんあびてなくなりました。
名前があらわすように中性で電気をおびていませんから体の中をたやすくとおりぬけ、細胞をきずつけます。その害はエックス線やガンマ線よりも5倍から20倍高くなります。
■重粒子線じゅうりゅうしせん
これは炭素やネオンなど、普通の状態じょうたいではほとんどとまっているような 原子核を加速器かそくきといわれる大がかりな装置そうちをつかってむりやりものすごい速さで走らせた線です。エックス線やガンマ線とちがって止まるときに細胞をきずつける力が最大になる特長を生かしてがんの治療に使われています。
〜"よくわかる原子力" http://www.nuketext.org/index.htmlより