入学支度金


わたしが木曜日に美濃加茂へ行く道中、坂祝(サカホギ)にあるR21沿いのライン川(ドイツのライン川に似てるからそう呼ぶらしいがほんとは木曽川デス)
晴れの陽射しがぶつかるともっときらきらして美しい。癒しの風景なんです。石の粗い感じがなんともいい。

3-22、美濃加茂にひとりの女の子がやってきた。
女の子は日系ブラジル人の15歳、4月から私立高校の特待生として進学する。しかし授業料は無料だが、入学にかかる費用の捻出が困難であり、入学支度費用の貸付に申請された経緯があります。
ひと月前位に担当者から申請を受け取っていたけど、実際にお会いしたのは昨日が初めてだった。
女の子は5人家族、父親が通訳の仕事をしてるが非常勤勤務、母親は日本語が話せない。
決裁が決定した為、借用書をわたしが持参したので受取りにみえたのです。
でも女の子ひとり、両親は一緒じゃない。
担当者いわく、ご両親の方針で、自分のことはなるべく自身でやるように"しつけ"してきたというのだ。わたしは驚いた。

3-19は公立高校の合格発表だった。この時期は教育費の申請が多くあります。その日もある親子がやってきて、公立高校合格したので費用が安くすむからほっとしたと喜んでみえた。わたしも親子をみてると微笑ましかった。お母さんはバッチリメイクのアクティブな、それでいてとても感じのよい方でした。緊張感がほぐれたんでしょう。わたしにあれこれおしゃべり、わたしもお嬢さんにおしゃべりした。お嬢さん受かったのは奇跡だって(笑)、。んなことない。
*わたしは窓口に、現場に入るとき、なるべくたわいも無い話をするようにしています。お金だけの話をして終わるのは杓子定規(しゃくしじょうぎ)で好きじゃない。たわいも無い会話は、案外相手がどんな感じの人柄か、何気にでるとこだと思う。

確かに公立高校なら入学金は5000円程度、私立なら15万円とかなり違う。これから毎月払う授業料も私立は発生するし、施設費用やら修学旅行積立金なども毎月馬鹿にならない。私立はどうしても高い。
公立高校は授業料無料ですよね、しかしそれ以外にやはり施設費用・PTA会費・修学旅行積立金など月々13000円ほどかかる、、はて、わたしは公立高校やったが月に授業料あわせても1万円かかってなかったような…。授業料無料にあやかり、まさか諸費用値上がりしてないやろか?ちょっと疑ってしまった。
2人と借用書を交わしました。お母さんは入金がいつになるか気にしていた。現場の担当者が印鑑証明ときちんと間違いがないか確認したので、写しをFAXし入金が速くできるようにわたしも手はずした。
「20が祭日だから、21には入金されます」と伝えると、「助かります、まだ制服を取りにいかないといけないので」っと安堵された。
わたしもそうだよね、ってその気持ちがよくわかる。ほんとはみんな合格発表のあとに買って帰るんだもん。わたしも高校の合格発表の時、うちお金ないけどほんまにたりるんかな??って、合格してるかどうかの緊張と複雑やった。制服やら鞄やら、わたしんときは電卓だったが、いまじゃ電子手帳を買わなきゃならん学校もある。こないだ明治大学にいく子はノートパソコンが必須だった。
教育にかかる費用は、日本がどんどん低所得化になるにつれ、反比例してあがっているのです。

ここで、先ほどのひとりで来た女の子に話を戻します。
通常は親子で来訪されるか、断然あるのは親権者だけでくることがほとんど。子供だけで来るなんてことはないに等しい。確かに相談にみえたときは父親と一緒だったようです。正直、日本のしつけにはお金の話しに子供はタブーなトコがあるんです。だから子供ひとりに行かせるなんてことは、日本の文化にはないのです。

以前ダニエルカールさんの講演を聴いたとき、幼い頃からお金は自分で稼ぐこと、家庭でのお金や経済の教育は日常的だった話を聴いて、日本はお金のしつけや学ぶ文化がなさすぎるのを痛感しました。
*またこの記事はいつかUPしますね
以前紹介したスージーオーマンの本にもありましたが、現在アメリカも教育費用にかけるお金が膨れあがってるそうです。そこで最も大切なのは、自分の家庭の経済状況をきちんと子供に伝えることだと。
あるスージーの実例に、高額な音楽大学を受け合格し卒業した女の子がいましたが、卒業後はまだ就職が決まっていないと両親に告げると、母親は恐ろしく憤慨しだしたそうです。
その背景には、我が子へのお金の心配をかけたくなかった両親の凄まじい生活、尽きてはマイホームを売却するまでとなった、家庭の崩壊が待っていたのです。
これが逆に子供に隠さず、苦しい経済状況を把握させていたらどうでしょう。
子供は両親に負担をかけまいと努力し、特待生を狙えたかもしれません。国立大学に気持ちを切り替えたかもしれないし、アルバイトだってしただろう。一人暮らしもせずにすんだかもしれないし、卒業後はしっかり就職できていたかもしれません。
なにより家族のよりどころであるマイホームを、手放す必要がなかったかもしれません。

だからわたしは融資についても同じに思うのです。
子供も自分の家庭の経済状況を認識し、一緒に背負っていくべきです。
子供は素直だから、親に負担をかけまいと、公立高校や国立大学をめざし、塾に通わず自力で勉強に励み、またはスポーツに励みます。
教育費用を受ける子供は、窓口に一度は必ず来て欲しい。中には親が隠して借りるケースもあるでしょうから。
そう考えるさなか、ひとりやってきた女の子は、とても自立した立派な子だと思い驚かされたのです。

女の子には連帯保証人もいましたので、その方の実印とサインが必要になること、親子3人の印鑑は全て違うものであること、口座のこと、償還のことをお話しました。
念のため、ふせん(ポストイット)にて両親がみてもわかるようにメモをいくつか貼りました。
女の子に「お姉さんの話、難しくなかったかな?わからないところはある?」って尋ねましたが、彼女は「大丈夫です」っていいました。
賢いし冷静。わたしが15歳ならチンプンカンプンもいいとこだ(苦笑)。
たわいも無い会話の中でどんなクラスかを尋ねたら、"国立大学を目指す科"だって。
女の子はわかってるんです、自分の置かれてる状況や家庭の経済状況を。だから一点も迷いのないのがなんとなくわかりました。
わたしが「なにか質問はある?」って訊くと、彼女は「いつ入金がありますか?」ってことなんで、丁寧に回答しました。
わたしは気になって話を続けた、「合格発表終わったけど、お金足りたかな?」
彼女は「買いに行ったけどお金が足りなくなって…制服を買いにいかないといけません」
・・・だいたい特待生だし、併願でなく単願。しかも入学支度金だけの申請だし、他の子より申請もひと月前にはしてるし、なんでこんなに決裁が遅かったんだ??合格発表またなくてもいいはずやに、わたしは担当者に聴きました。するとこんなやりとりがあったそうです。
彼女の両親は先ほども書きましたが、自分のことは自身でやるようにしつける教育方針です。
その為に、自分で問い合わせるようにと、わたしの職場の上司に直接電話で問い合わせをしたそうです。それが裏目にでてしまい、上司は"子供を"ダシ"に使ってるというような疑いを持ち、審査会にかけたので決裁に時間がかかったそうです。それを聴いてわたしは愕然としてしまった。

入学式は4-9、連帯保証人へ郵送して返戻されて美濃加茂にもってきても最低1週間はかかる、PDFですぐ書類を送っても入金は翌日、休日がはいれば休日明けにしか入金されない。早くて4月はじめの入金しかできない。
それから制服を買いにいき、裾を直したりしてたらほんまにギリギリ間に合うかどうか。
ーそれなのに女の子はずっと冷静だった。そして自転車で帰ってゆきました。

わたしは帰りの一時間、車を運転しながらふがいない気持ちでいっぱいだった。
なんの為にわたしは現場にいってるんだろう、って。意味がないじゃないかって。
上司に彼女のことはなにもヒアリングされなかったし、わたしも気づいてちゃんとせかせるようにできたはずやった。
結局、わたしなんて、予算を埋めるために形でしかあてにされてないってことなんかな。うすうす気づいていたんやけどね。

ゆうべは、花粉症で涙がとまらなかった。